おしえてムーラン

2021年度介護保険制度の改正について

介護保険法は、1997年12月に公布され、制度自体は2000年4月から始まりました。制度が始まってから20年が経過し、これまでの間に3年に一度のサイクルで制度の見直しが行われてきました。そして、2021年今年が見直しの年度にあたります。従来までよりも、よりよいサービスを受けられるよう見直しされてきたとはいえ、問題は山積みというか、先送りにされてきている感が否めない気がしています。介護業界には財源不足や人手不足、少子高齢化などさまざまな課題があります。特に来年はいわゆる“団塊の世代”が後期高齢者に突入する年。支え手不足により介護保険制度の財源がより圧迫される見通しとのこと。


上記の課題を見据え、今年度は以下の改正が行われます。

◎地域包括ケアシステムの推進
◎自立支援・重度化防止の推進
◎介護人材の確保・介護現場の革新
◎制度の安定性・持続可能性の確保…

そして新型コロナに係る改正として、

◎感染症や災害への対応力強化

が盛り込まれました。具体的には、

◎高額介護サービス費の上限額の引き上げ(本人または世帯全員が住民税課税者の自己負担額は月額一律44,000円だったが、年収に応じて上限額が引き上げられる。)
◎介護・障害・子ども・困窮の相談支援に関わる事業の役割を地域包括支援センターなどに一本化する
◎介護予防の柱としての「通いの場」の推奨(これはそもそも2014年の改正で盛り込まれた論点でした。今回改めて「推し」の論点となった背景には、高齢者が趣味や運動、会食、ボランティアなどを気軽に楽しめる場を住民主体で設け、通うことによる「介護予防」「認知症予防」「QOL(生活の質)の向上」の促進につなげたい…とのことですが、増大し続ける保険給付を少しでも抑えるのが目的なのかなと個人的には思います。)

他にも業務負担軽減のための「介護事業所におけるICTの導入」などの論点が盛り込まれています。(詳しくは厚生労働省ホームページをご覧ください。)今回の改正を読んでいても小規模な改正だとは思えないのですが、実は冒頭でも書いたように、本来今年度の改正論点として入っていたものが、2024年度の改正へと先送りされたものがかなりありました。たとえば…

◎介護保険料の負担年齢30才への引下げ
◎居宅介護支援の自己負担1割の導入等

です。単に先送りされただけであって、次回2024年改正に再び取り上げられるだろうし、成立の可能性も否めません。先送りされる分良いことといえば、ICT関連(AI等)の分野は今後3年でさらに技術も進歩して、ケアプラン作成等で今以上に利用できるのかもしれません…が、高齢化が進むほど、要介護者が増えるほど、むしろ私たちの利用者負担額や税などが増えるのは目に見えています。


介護保険制度は、現在、40歳以上の人が加入者(被保険者)として保険料を納め、介護や支援が必要と認定されたときに、介護サービスを利用できる制度です。そしてサービス利用料の一部を介護保険が負担してくれます。利用者の負担は原則1割(所得に応じて2割・3割)です。
残りの負担は介護保険の財源で賄っており、ちなみに財源の50%は加入者の保険料、残りの50%は公費(国・都道府県・市町村の税金)です。私はあくまでこの制度は「保険」だと思っています。だからこそ、負担している保険料が、本当にこの給付を必要とする人たちに、質の良いサービスとして行き届くことを願っています。

PAGE TOP