おしえてムーラン

コロナ禍と不動産

今年はコロナウィルスの影響でねぶたなどの季節を感じる行事がないためか9月といわれても何だかピンとこない感じもありますが、今回は不動産取引や不動産に係る制度におけるコロナの影響について論じます。

1.路線価と今後の土地価格の動向

7月に国税庁が発表した路線価では、東北六県全体(標準宅地の平均値)で前年比1.2%の上昇でした。青森市の最高地点となった“青森市新町1丁目 新町通り”では3.2%の上昇でしたが、上昇したのは1992年以来28年ぶりのことです。近年の傾向と併せてみれば、底打ちからやや上昇へと転じた局面とみることができます。但し、この路線価は1月1日現在の価格であってコロナの影響がまだ反映されていません。公的価格でコロナの影響が反映されるのは7月1日時点の価格である地価調査価格(都道府県が発表する土地取引の際の指標となる価格)からになりますが、多くの見方は首都圏の特に中心部は下落圧力が強まるのではないかというものです。コロナの影響で在宅ワークが進むことに加え、働き方の多様性や”時間経済”の考え方(通勤時間が無くなる効率性など)と相まって、一部の業態では都心のオフィスに通う必要性が低下するからです。パソコンでテレビ電話機能と書類等のやり取りが可能となれば勤務先に通う必要もなく、それはどんな所に住んでいても通信機能さえ整っていれば仕事をするのに支障がないことを意味します。このような傾向は、私たちのような地方在住者にとって人口増加とまでは言わないまでも、人口減少の抑制に働くことは十分に期待され、相対的な人口構成の変化が地方の土地価格の微上昇や下落抑制を促すのではないかと思います。

2.路線価修正の可能性

先に述べた国税庁が発表する路線価は、相続や贈与が発生した場合の評価の基準となる価格です。実際に相続税を支払う必要が生じる被相続人の割合は、2015年の法改正以降で約8%、概ね12人に一人の割合です。これは全国平均の数値であり、青森は土地評価額が相対的に低いためこの割合を下回っているでしょうが実際に支払い対象になる人は存在し、被相続人所有土地の場所によってはコロナの影響で土地の実勢価格が下落しないとも限りません。相続が発生した時の時価評価とは、原則的に相続発生年の路線価を基準とすることになっていますが、国税庁でも急激な実勢土地取引価格の変化があった場合は路線価の修正という異例の検討をしているようです。

3.中古住宅取引等への影響

収入減少で住宅ローンの支払いが厳しくなる人が多くなることが予想されています。そうした場合借入をしているご本人にとっては、まずは借入先に相談することが肝心です。金融機関では個々の事案を精査し支払い猶予や一時減額等の対応をしてくれる場合があります。又、売却を要する場合については”任意売却制度”があります。これは、ローンの支払い困難者の住宅等を競売にかける前に市場で売却する制度です。売主となるローンの支払い困難者にとっては、競売になるとそれが公になりますが、任意売却中に取引が成立すれば支払い困難が原因で売却したことが公になりません。又、競落される場合より高値で取引が成立する可能性が高いため、場合によっては借入完済したうえでお金が残るケースもあります。貸出元の金融機関にしても競売より債権の回収額が多くなるのであれば任意売却を利用した方がメリットがあります。加えて、任意売却によって売り出された物件は、それを購入する人にとっても一般的な市場取引価格よりやや安価に購入できる可能性があるうえ、人助けにもなります。市場公開期間が短いものではありますが、現在の社会的背景から、任意売却物件は今後増えることになると思います。

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