昨年10月に消費税が8%から10%に引き上げられました。今回は消費税について少し深く考えてみたいと思います。
1. 消費税を巡る家計と国の関係
今までと同じ品質、同じ量の消費を行うと仮定すれば、税率がアップした分の支出が増えることになります。また、支出といっても税ですから、固い表現をすれば可処分所得が減少することになります。それは言い換えれば実質所得の減少です。消費と景気動向は当然に深く関係していますが、経済学としても、また、そんな固いものじゃなく誰もが直感的に感じるように、所得が減ると消費が減少します。消費は国全体にとっても景気を左右する最大要因であり、消費すればこそ国や地方公共団体に消費税という税収が入りますが、消費が減少すると税収の減少に繋がりかねません。理屈っぽく考えてみましょう。8%から10%に上昇した時の上昇率は、8%を100とすると、10%は125、つまり25%の上昇です。消費が25%落ち込むことはないでしょうから、税収減になることもないのですが、消費マインドが低下することは大きな問題です。前回、本誌11月号で、なぜ人は消費するのかについて述べました。いわゆる2,000万円問題を考えたとき、個々の家計では無駄な出費を抑えたほうが合理的です。しかし、日本に住む全員が合理的な消費行動をとってしまうと“合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)”という「個々は正しいのに全体でみると不利益な状態」になってしまいます。
2. 増税の振幅
今回の消費増税については、生活必需品などでの軽減税率が取り入れられ、教育無償化などの対策もなされました。また、キャッシュレス推進の目的と抱き合わせのポイント還元など、官民一体で消費の落ち込みを防ごうとする動きがみられました。前回の増税は5%から8%への上昇で、かつ、将来は10%になるというアナウンスの下で行われましたので、駆け込み需要とその後の原動の振幅度が大きかったのですが、今回、は、“予定通り(実際は延期されて)”の上昇でしたので、様々なデータからは前回ほどの振幅は見られないような気がします。
3. 今後の家計はどうすべきか
結局のところ、日本全体が将来に悲観的になっていますから、身を守るための節約志向は今後も続くのではないかと思います。個人でも、将来に対して悲観的になると、生活や活動の意欲も減退し、それが更なる悲観的展望を生む悪循環になりがちですから、どこかで、気持ちを切り換えて意欲を高めた行動をして、それを続けていかなくてはなりません。今、日本は名目GDPで世界3位ですが、国民一人当たりのGDPでは世界26位になっています。少子高齢化、人口減少の加速化によって、なお悲観的になっている気がしますが、こんな時こそ“リストラ”本来の意味の再構築が必要だと思います。大企業が互いに手を組む事業を増やして生き残りを図ったり、コマーシャルの作り方、商品デザインを見ても直感的訴求力を重視している傾向が見えます。弊社でも本業を強くするために継続的に取り組んでいることがあります。“働くことは苦痛である”という暗黙の認識があるためなのかはわかりませんが、働き方改革という旗印の下で、労働できる時間は減っています。一方で、成果はこれまで以上のものが求められますから、自分内、家庭内リストラで思い切って何かを捨て、何かを得るための行動に出る必要がると思います。人間は弱いものですが、意外と強い面もあります。踏み出してしまうと案外、良い結果が出ることが往々にしてあると思います。