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配偶者居住権(民法改正案)について

人生100年時代と言われるようになってきています。住み慣れた我が家で、夫婦仲良くできるだけ健康に長生きしたいと思うものですが、相続は誰しも避けて通れないものです。民法の相続分野の改正は約40年近く行われていませんが、この度、法制審議会にて民法改正の要綱案をまとめています。その中にあるのが配偶者居住権です。


その配偶者居住権とは…自宅の所有権まですべて取得するのではなく、居住権、つまり無償で使用する権利を設定することで、配偶者が亡くなるまで生活をすることができる権利です。所有権全部を取得するわけではないので、他の相続人に渡す金額が減ります。現在は相続が発生した場合、遺言書があった場合にはその遺言通りに従うか、協議の上、遺産分割を行うことになります。住居も相続の対象となりますので、相続で起こりうることとしては、・夫や妻が亡くなり、夫婦以外の第三者に相続された場合、先立たれた配偶者が立ち退くケース・配偶者が家を相続しても、預貯金を含めたその他遺産の相続分が少なくなり貧しい生活が避けられなくなるケースなどが考えられます。超高齢化社会が進んでいることもあり、高齢になった配偶者が今住んでいる家を離れて新しい生活を始めるのは負担も大きいこと、暮らしていくのが非常に困難な貧困高齢者が出ないようにすること、配偶者居住権の新設はこれらの仕組みを整えるという意図があるようです。例えば夫が亡くなり、住居2,000万円、預貯金3,000万円が相続財産だとすると、妻と子供ひとりで相続すると、妻2,500万円、子2,500万円になります。現行制度で考えると、妻が今住んでいる住居にそのまま住み続けたいとなると、住居2,000万円、預貯金500万円を配偶者が、預貯金2,500万円を子が相続することになります。家にはそのまま住み続けられますが、その後、生活していくためのお金が少なくなる状況が生まれてしまいます。


改正案で考えてみると、住居の居住権と所有権に分けられます。妻が居住権1,000万円と預金1,500万円、子が所有権1,000万円と預金1,500万円を相続する形になります(それぞれ2,500万円ずつ)。これにより、妻は今の家に住み続けられて、生活資金も確保しやすくなり、老後に食べるものもなく困ってしまうようなことは避けられそうです。改正案ということでありますが、施行された場合には、老後も安心して住み続けられるという方が増えることになると思います。ただしひとつ考えられるのは、相続した時には配偶者居住権を利用して、居住権と所有権を分けたのは良いものの、住んでいる間に「今の家は私ひとり住むには大きすぎるなぁ…」、「雪片付けなど、家を維持していくのが大変になったのでマンションに本当は引っ越したい…」など後々、自身の生活の仕方について気持ちが変わってくることもあるかもしれません。そのようになった場合などの対策はこれからになりますが、新しい制度ができてくるとそれに伴い何かしら問題点も出てくるものです。それらを改善しながら、より良い制度が出来上がってくるのではないでしょうか。この配偶者居住権についても注目しておいてください。

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2018年度介護保険制度改正のポイントについて

2018年介護保険制度の改正がありました。改正ごとに内容も細かくなり、複雑になってきています。ただ、言えることは、介護保険サービスを利用する人にとっての自己負担は増えているし、公費で賄うサービス内容はより“自立”をうたった抑制傾向が強くなってきているように感じます。今回の改正も、利用者向け・事業者向け多岐にわたり様々な改正が行われましたが、特に私たちに身近な「利用者向け」の改正点についてとりあげます。


■改正点①「介護保険の利用者負担が3割へ(2018年8月より実施)」
これまで65歳以上の方の自己負担は1割または2割でしたが、今回3割負担になるのは2割負担だった方のうち、・合計所得が220万円以上・年金収入等が単身で340万円以上、夫婦世帯で463万円以上上記二つの条件にいずれも該当される方です。ただし、自己負担を軽減する「高額介護サービス費」によって3割負担の方でも上限が月額4万4000円になるので、一律に負担が1.5倍になるわけではありません。なお、40~64歳の方は従来通り1割自己負担です。
■改正点②「大企業の会社員の方の介護保険料の見直し」
これまで「加入者割」でしたが、昨年8月より段階的に「総報酬割」になってきています。つまり、年収が高い方ほど介護保険料が引き上げられたことになります。
■改正点③「70歳以上の高所得者の高額医療合算サービス費の自己負担UP」
1年間(8月1日~翌年7月31日)の医療保険と介護保険の自己負担額が、所得に応じた限度額を超えた場合、超えた分については申請により払い戻されます。これまで70歳以上の世帯については、“現役並み所得者”の区分は一つしかなく、一律67万円でしたが、2018年8月以降は所得区分が70歳未満を含む世帯同様となるため、限度額が増える方もいらっしゃいます。
■改正点④「介護医療院の創設」
2024年3月末までに廃止が予定されている“介護療養型医療施設”では医療面と介護面のサービスが行われていましたが、新設された介護医療院ではさらに生活面でのサービスも行われることになりました。
■改正点⑤「福祉用具レンタル価格に上限設定」
同じ福祉用具なのにレンタル業者によって価格に大きな差があったことを是正するため、2018年10月より上限が設けられます。
■改正点⑥「障がい者福祉サービスとの共生」
6 5 歳 に な る と 障 害 福 祉 サ ー ビ ス メニューが介護保険サービス内にある場合、介護保険サービスが優先され、これまで利用していた自身に合った障害福祉サービスが利用できなくなるケースがありました。今後は介護保険と障害福祉サービスの提供を一体的にうけることが可能となります。

少しでも介護費用を抑えるためには?

いくつか方法があるのですが、“世帯分離” “医療費控除” “障がい者控除” “社会保険料控除” が挙げられます。ただ、世帯分離はすべての方に有効なわけではありませんし、デメリットもあります。様々な“軽減”を受けるためには最寄りの自治体などへ申請が必要となりますのでお忘れなく。

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インスペクションと瑕疵保険

4月1日から、中古住宅の取引の際に「インスペクション(建物状況調査)」の説明が義務化されました。私たち宅地建物取引業者は、売買契約前の重要事項説明時に、その中古住宅がインスペクションを受けたものなのか、今後実施する予定はあるかを売主に確認し、買主に説明することになります。

インスペクションとは?

中古住宅の基礎や外壁にひび割れはないかなど、劣化の状況を目視や計測機器を使用して専門の検査技術者が「依頼主」に報告することを言います。前述の建物の外部に関することの他に、建物内部の小屋裏点検口や床下点検口から目視可能な範囲で調査します。主な確認事項は、①構造安全上の問題の有無(例)シロアリ被害、腐食、傾斜、ひびわれ、など。②雨漏りや水濡れの有無③配管設備の重大な劣化の有無といったところになります。

インスペクションの意義

買主にとってインスペクションを受け、安全性などが客観的に認められたものを購入できるのであれば、そうでないものと比べ相当に安心して購入できます。言い換えれば、売主は、インスペクションを受け、安全性などを客観的に説明できれば売りやすくなります。

誰がインスペクションを依頼するのか?

売主が依頼するのが主だとは思いますが、買主や私たちのような仲介者である宅建業者も依頼者となることができます。

既存住宅かし保険との関連

既存住宅かし保険とは、買主が購入後に構造体や雨水の侵入部分に欠陥が見つかった時に、保険会社から保険金で不具合の修繕費用を出してもらえる制度です。かし保険を付保するに当たり、建物の検査を実施することになりますが、インスペクションを行う前に、担当検査員にかし保険に入る意思がある旨を伝えれば、かし保険の検査と兼ねることもできます。通常のインスペクションと、かし保険の検査は、多少検査項目が異なるため、事前に伝えることがポイントとなります。

かし保険のメリット(主なもの)

①安心感がある。
宅建業者が売主の場合は、瑕疵担保責任を引渡から2年間負うことが最低限義務付けられていますが、宅建業者以外の売主の場合は、特にそのような定めはありません。したがって瑕疵担保責任を負わないという契約も有効に成立します。そうしたときに、かし保険に加入しておけば、その加入期間は構造体や雨水侵入部に欠陥があっても費用負担の心配が軽減されます。軽減という表現を用いたのは、免責金額が設定されていますので、少額な負担で修繕できるものについては保障されないからです。又、宅建業者の売主物件で瑕疵担保責任が定められている場合であっても、その宅建業者が倒産してしまったら何の補償も受けられないのが通常ですが、かし保険に加入していれば、その瑕疵保証を受けることができます。
②税優遇措置が受けられる
税優遇措置の中でも、メインは住宅ローン控除が受けられることだと思います。中古住宅で、新築後20年を超えると、原則的には住宅ローン控除を受けられないのですが、かし保険付きのものであれば控除の適用対象となります。宅建業者や建築業者から購入した物件の場合は、控除対象年限(10年間)の合計で上限400万円が、業者以外の売主から購入した物件の場合は200万円を上限として控除されることになります。又、業者から購入した物件で、かし保険付きの物件の場合は、すまい給付金の対象にもなります。かし保険にかかる検査費用、保険加入費用を考えても、充分な恩恵を受けることができることになります。以上、インスペクションとかし保険の概略を述べてきました。いずれにしても検査費用がかかりますし、検査の結果、不具合が明らかになった場合、売主にとっては、却って売りにくくなるという側面も持ち合わせています。これから運用が開始され、ある程度の問題点も明らかになれば、まだ多少修正の余地がある制度なのではないかと思います。

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ビットコインをはじめとする仮想通貨

テレビやニュース等でビットコインや仮想通貨という言葉を聞く機会が多くなってきていると思います。ビットコインは、「サトシ・ナカモト」という人物が2008年に発表した論文を元に作成された仮想通貨、もしくは暗号通貨と呼ばれるものです。現金のように目に見えるものではなく、インターネットを通じて送金などのやり取りが行われます。ビックカメラやHISなど、日本国内でもビットコインで支払いができるお店が少しずつ増えてきました。このビットコインはブロックチェーンの技術を使い、取引の内容が改ざんされない工夫がされています。ブロックチェーンとは、取引内容などのデータをひとつのブロック(取引の束)として、1つの鎖のようにつなげて記録していく仕組みのことです。取引データには送金額や送金人などの情報が含まれていて、ビットコインでは10分に1個のブロックが作成されて、次の取引につながっていきます。


ビットコインをはじめとする仮想通貨は現在、約1,000種類以上あります。仮想通貨といえば、世界での取引量と時価総額が一番であるビットコインが一番有名ですが、それ以外の仮想通貨のことをアルトコインと呼び、イーサリアム、リップル、リスク、ネム、そしてビットコインやイーサリアムから分裂(ハードフォークした)ビットコインキャッシュ、イーサリアムクラシックなどがあります。それぞれ特徴のあるコインになっていますが、ビットコインの問題点(送金スピードなど)を解決したものになっている場合が多いです。例えばリップル(XRP)は、国際送金をする際に何個も銀行を経由することによって時間がかかることや送金手数料が高いという問題を、リップルの仮想通貨XRPをハブ通貨として使用することにより、安くて速い国際送金を目指すなど、いろいろな利用がこれから見込まれています。ビットコインが未だに王道と呼ばれているのは、他のコインを買う際に、1度ビットコインにしたものを他の通貨と交換する場合が多いからであり、仮想通貨の中の基軸通貨と言われる所以です。時価総額が高く利用が見込まれている通貨であれば良いのですが、1,000種類もあるコインの中には、実質的に意味をなさないものもあり、草コインなどと呼ばれているものもあります。草コインは何かのきっかけで暴騰する可能性もありますが、購入には注意が必要です。仮想通貨は政府や中央銀行などを持たない通貨で、価値の交換手段として利用されるのが一番ではありますが、現在は投機目的で資産の一部として購入している人が大部分かもしれません。


どのように仮想通貨を購入するかですが、まずは取引所に口座を開設します。ビットフライヤー、ザイフ、ビットバンクのような国内の取引所もあれば、バイナンスやポロニエックスなど取引できるコインの数が多い海外の取引所を利用している方も多いです。初めてであれば、日本語対応しているかどうかも大きなポイントになると思いますので、まずは日本の取引所で試してみるのが良いかもしれません。口座を開設し、指定された銀行口座へ振り込み(入金)することで取引が可能になるわけですが、口座開設後にはセキュリティを強化するために二段階認証をしておくのをおすすめします。コインを売買するには、「販売所」で行う方法と、「取引所」で行う方法があります。販売所では、その販売所が保有しているコインを欲しい時に買ったり、売りたい時に売ったりすることができますが、数パーセントの手数料が上乗せされた金額にて購入することになりますので、少し高い金額で買うイメージになります。取引所では、株の取引などと同じように成り行き注文、指値注文をすることができ、買いたい人と売りたい人の意思決定によって売買が成立するようになっていて、手数料はかなり安く済みます。ビットコインですと3月5日現在、1BTC=約120万円ですが、最低取引単位は0.00000001BTCなので、数百円からビットコインを購入することもできます。2017年のはじめから2017年末までは仮想通貨の価格が一気に何倍にもなりました。しかし、年が明けて2018年1月はじめから今まで上がっていたものが逆回転をはじめ、リーマンショック以上とも呼ばれる急落になりました。仮想通貨を持つのは全資産の10%に抑えておきなさいという専門家の意見もあります。私自身の経験からも、株や投資信託の値上がりは数%から数十%の値上がり値下がりというのはありますが、数ヶ月で数倍になるというのは驚きでした。バブル時代を経験していない私からすると、「バブルってこういうことなのだ!」というような値上がりする時の興奮と、急落する時の精神状態を経験したことは、講師としてお話をする際など、これからのファイナンシャル・プランナーとしての活動のためにも良かったと感じています。自分の資産内容と照らし合わせて、仮想通貨も資産配分に組み入れるのであれば、多すぎず、適切な配分にするべきかと思います。


中央政府が独自の仮想通貨を発行する(ベネズエラでは自国で産出される原油を後ろ盾にペトロという通貨を発行してお金を集める)など、仮想通貨が今後、どのようになっていくかはわからない部分もありますが、仮想通貨を形作っているブロックチェーンの技術は大きな革新をもたらす可能性があります。仮想通貨はもちろん、決済や送金など金融分野、土地の登記・資産管理・商業管理・医療情報などの非金融分野での応用が期待されています。30年前、パソコンがなかった時代、インターネットがなかった時代、携帯電話がない時代でした。パソコンが普及し、インターネットが身近なものになり、スマートフォンをひとり1台持つようになっています。中国などではQRコードを使って支払いをするようになっていますし、日本も「支払いはデータで!」というように少しずつ現金を使わない生活に変わっていくかもしれませんね。

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現状に沿った制度の見直しなら大歓迎!

先日、青森県居住支援協議会が主催するセミナーへ参加してきた。高齢者や障がい者への居住支援の現状説明と、成年後見制度と昨年施行された法定相続証明制度についての説明だった。セミナー前半では想像以上の現状を聴き、民間と行政の連携が今まで以上に今後の課題になりそうな印象を持った。特に私にとって興味深かったのは、セミナー後半の青森県司法書士会の沼田会長のお話だった。成年後見制度や法定相続証明制度についての概略は知っていた。とはいえ、法定相続証明制度については、昨年、法務局の方がこんなに熱心にPRにまわられているのは何故かなと思っていた。その答えが沼田会長のお話を伺って、今更ながらわかった。そもそも…相続が発生し不動産を相続しても登記の期限がなかった。そのため亡くなった方の名義のまま放置され、現在に至るケースがある。ところがこの相続登記未了が、東日本大震災の復興の妨げになった。高台に新しく住宅街を作ろうとしても、その土地の所有者が不明、または判明しても亡くなった方の名義のままで、なかなか復興事業が進まなかった…そんな事情が制度施行の背景にあったそうだ。今まで相続手続といえば、被相続人の出生から死亡までの戸籍書類や、法定相続人全員の戸籍書類を不備なく揃えて各関連機関へ持参しなければならず、手間がかかるだけでなく費用もかかっていた。法定相続証明制度を使い証明書を発行してもらうためには、一度戸籍書類を取りそろえ、法定相続情報一覧図を添えて法務局へ申請しなければならないが、たった1枚のこの証明書が、今までの何種類もある戸籍書類の役割を果たすそうだ。(ただ、戸籍書類を不備なく揃える労力や時間を考えると、お近くの司法書士さんなどに依頼したほうが安心だと思う。)


さて。相続に関する法律の大幅な改正が検討されていることは年明けのニュースでも話題になった。民法の相続分野の大幅な見直しは1980年以来、約40年ぶり。その間、高齢化が著しく進行してきた。昨今、被相続人が亡くなった場合、相続人となる人の年齢も高くなっており、比例して、高齢の配偶者の生活保障の必要性も高くなっている。そんな背景もあり、民法改正が検討されている中で、不動産関係の部分をピックアップする。

配偶者の居住権の確保

たとえば子供がいる場合の配偶者の法定相続分は、遺産の2分の1。法定相続分で分割した場合、子供の取り分を捻出するため、家を売却しなければならない場合も出てくる。そこで、住んでいる家に限って所有権とは別に「配偶者居住権」を新設。この権利を設定すると、配偶者以外の方がその家の所有権を持っていても、配偶者は住み続けることができる。

遺産分割

結婚してから20年以上の夫婦であれば、配偶者が居住用の不動産(土地・建物)を遺贈や生前贈与したときは、原則として遺産分割の計算対象としてみなさない規定が設けられた。このほか、パソコンで作成した財産目録を添付した自筆証書遺言を法務局で保管できる制度や、遺産分割前に相続人が預貯金を引き出せるようにする制度を新設。被相続人の介護などをした相続人以外の親族(相続人の妻など)が、相続人に金銭を請求できるようにすることなどが盛り込まれたそうだ。現行制度の不便さを解消する現状に沿うような改正なら、どんどん進めてほしいと思う。

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相続登記義務化と問題点についての私見

昨年末の新聞に、現在は任意となっている相続登記を政府が義務化の方向で考えている―という記事が掲載されました。

所有者不明土地が拡大している

いわゆる空き家問題も含め、全国的に所有者不明の土地が増えていることが大きな社会問題になっています。法務省が実施した調査では、50年以上にわたって登記変更がないことによって所有者不明となっている可能性がある土地の面積は、九州をすっぽり呑み込むほどになっているとのこと。持主が不明ということは、全く利用されていない土地であるということになります。売買や賃貸は勿論、開発行為等もできないため、未利用地の拡大は経済全体にとっても大きな損失です。この所有者不明土地の拡大の要因が、相続登記が任意であり、義務ではないからだというのが政府の見解です。

相続登記をしないとどうなるか

私のところにも、「家を売りたいのだが、土地・建物の名義が亡くなったひいおじいちゃんのままだ…」というような相談がくることがあります。相続登記を行わないまま、40年、50年と放置すると、その間に被相続人の法定相続人の数はどんどん増えていきます。相続登記をするためには、全ての法定相続人が話し合って、遺産分割協議書に署名し、実印を押さなければなりません。放置された期間があまりに長いと、協議書の作成ができない状態になってしまいます。

なぜ相続登記をしないのか

新聞には相続登記をしない理由として、固定資産税を免れるために意図的にしないケースも多い旨記されていました。ただ、私の肌感覚からすれば、相続が発生した段階で、相続人の間でモメた、あるいは、モメるのがイヤで放置した―というケースの方が多いのではないかと感じます。

所有者不明土地を減らす有効な対策は…

このような所有者不明土地=未利用地を減らすために相続登記の義務化が検討されていますが、法案に、これに違反した場合の罰則を盛り込むことも検討されているようです。一方で、土地所有者の管理負担が多ければ、根本的な解決につながらないのではないかという意見もあるようです。そこで、法務省は合わせて土地所有権の放棄の可否も検討するようです。民間の個人が管理できない土地について、国や地方自治体に土地取得を相談できる仕組みを設けるというものです。これは私見ですが、現行の民法の相続に関する規定では、特定の不動産だけを相続放棄することはできないですし、現実的に地方自治体が民間の個人から土地を取得する仕組みができるか大いに疑問です。固定資産税は地方の市町村にとって、とても大きな財源です。市町村が土地を取得してしまうと自ら財源を減らすということになってしまいます。

最後に、全くの私見

若干論点はズレますが、所有者不明土地を調査であぶりだしたときに、相続人がいないまま亡くなった方の土地だということが判明するケースも出てくると思います。通常、こうした土地は弁護士などの相続財産管理人が選任され、それを売却した後にそのお金は国庫に帰属しますが、こうした土地について、まずは有効活用をすべきだと思います。青森に当てはめて考えれば、慢性的に雪捨て場が不足しています。又、昭和の時代に開発された分譲住宅地では、ゴミ置場が路上にあって通行の妨げになりがちだったり、ゴミ置場が敷地の前に設置された住宅土地は、売却するときに市場性の減価要因になったりします。所有者不明土地の対策も当然に必要ではありますが、国庫帰属地を雪捨て場、ゴミ置場等の公益的な用途に提供して活用し、その受益者になる人たちは、町内会単位で固定資産税程度の負担をすれば地方財政にも支障がないように思います。このような取り組みから、所有者不明土地の利用法に発展できれば、管理負担が減ることにより、不明土地そのものの解消に少しはつなげられるのではないかと考えます。

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『つみたてNISA』の利用~住宅リフォーム・ 繰上返済の資金など~

結婚、出産、住宅購入、老後などのライフイベントに欠かせないお金。中古住宅を購入して新たな生活をしていたとしても、数年後に雨漏りがしてきたり、浴室・洗面所・トイレなど水回り、外壁を塗りなおさなければならなかったりと、少しずつリフォームしなければいけない箇所が出てきます。そのために「お金を貯めなきゃ…」と思っている人も多いはず。それらリフォーム資金として10年後に200万円が必要と見積もった場合や、住宅ローンの繰り上げ返済をするためにまとまったお金を作るためにも、2018年1月から始まる制度、“つみたてNISA”を紹介したいと思います。


“つみたてNISA”は年間40万円までの投資について、20年間、利益が出た分は非課税となる制度です。金融庁が厳選した128本の投資信託(12月6日現在)のうちから、自分自身で選んだものを少額から積み立てていくことができます。投資対象をいろいろなものに分けて、長い時間をかけてコツコツと投資信託を積み立てることでお金をゆっくりと育てていく、『長期・積み立て・分散』投資が実現できます。少額から月3.3万円まで積み立てることができるので、投資の初心者でも学びながら運用を体験できると思います。また、いつでも解約してお金を引き出せることもメリットです。私自身も運用しながら、銀行の口座から引き出す感覚で必要な時に必要な分を解約して利用しています。非課税のメリットを考えてみましょう。通常、投資して利益が10万円出た場合、利益に対して20.315%の税金がかかり、手元に戻ってくる利益分は79,685円になります。つまり20,315円が差し引かれてしまいます。この分はかなり大きいですよね!つみたてNISAは非課税なので、この税金分がお得になるわけです。この税金のメリットを存分に利用して欲しいと思います。


投資信託を選ぶ際に気をつけておいて欲しいポイントは、投資する対象(株式・債券など)、投資する地域(日本・先進国・新興国など)を上手く組み合わせることです。例えば新興国型の投資信託だけを積み立てるなど、一つの地域だけに絞ってしまう場合は、値上がりすれば良いですが、大切な資産が思ったより値下がりしてしまうことも考えられます。例えば日本、アメリカなど先進国、新興国と地域を分散しておけば、新興国が下がったとしても、日本・先進国の値上がり分で損益をプラスに保つこともできます。1996年から2016年までの20年間、ひとつの資産だけに投資した場合と、国内株式・外国株式・国内債券・外国債券の基本4資産に分散投資したものを比較した場合、分散投資をした方がリスクを抑えながら上手な運用ができるという結果が出ています。ぜひ、複数の投資信託を組み合わせる分散投資を心がけてください。取り扱い商品は各金融機関で異なります。次に信託報酬に気を配ることです。信託報酬は、投資信託を持っている間かかってくるコストですが、長期的に見るとこのコストが大きく運用成果に関わってきます。あるネット証券のホームページを確認しますと、日本・先進国・新興国で差があり、0.18%~1.6%と1%以上も異なります。例えば30歳~60歳までの間、月に2万円ずつ積み立てた時の信託報酬額の総額を比較すると、信託報酬が0.5%の場合は54万円、信託報酬が1%の場合は108万円と、0.5%の差ではありますが54万円もの差が出てきます。信託報酬が低いものが必ずしも良い運用をしている投資信託とは限りませんが、日々かかってくるコストだけで考えると長期的に見ても大きな差になりますので、信託報酬ができるだけ低いものを組み合わせていくことが大事だと考えます。


あくまでも投資信託で運用することになりますので、損失が出ることもありますが、今まで資産運用や投資には縁がなかったとしても、つみたてNISAの制度を利用して「お金にも働いてもらうこと」を意識しながら実践してみてください。この制度を上手く利用して、長期でコツコツと住宅リフォーム資金・繰上返済資金などまとまったお金を作ることも選択肢の一つになると思います。

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基準地価と地価動向

年に一度は青森市の土地価格動向についてこのコーナーで記すように心がけていますが、9月下旬に“基準地価”が発表され、今年の地価に関する公的な数字が出そろいました。

基準地価

基準地価は公示価格と並んで、実際の土地取引の際の指標となるものです。公示価格の発表主体は国土交通省、価格時点(いつの時点の価格を表すものなのか)は1月1日であるのに対し、基準地価は各都道府県が発表、価格時点は7月1日という違いがあります。発表主体は異なれど、公示価格と基準地価によって、半年ごとに取引の際の相場を示しているということです。

現在までの地価の動向は…

バブルがはじけて以降、地価は下落を続けてきた印象が強いのですが青森市内では2003年までは、住宅地の一部で上昇がみられました。大規模商業施設を核とした商業集積地のある地域ができたことが大きな要因だと思います。ただその後は、底の見えない下落が続いていました。2年前、2015年3月に発表された公示価格で12年ぶりに住宅地の上昇地点が現れ、それから少し風向きが変わったように思います。そのとき上昇したエリアは、その後もわずかではありますが上昇を続け、今回の基準地価においても、青森市内の住宅地として唯一、上昇しています。又、その上昇エリアの周辺のエリアや、青森市内の中心部においては横ばいとなりました。いわゆる“人気のあるエリア”は下げ止まったと言ってよいと思います。その他のエリアにおいては、まだ下落傾向は続いていますが、下落幅は縮小しています。

今後の地価動向予測

地価は回復傾向を示しているようにも思えますが、本当に“回復”と見てよいのか?地価に影響を与えるものとして、①社会経済の状態、②人口動態の2つが大きな要因として考えられます。経済については10月中旬において日経平均株価が21年ぶりの高水準となっていますが、生活者がその恩恵を受けている実感が乏しく、消費もやや回復の兆しはあるもののまだまだ不透明な状態です。人口については、少子化に加え地方においては大都市圏への人口流出が続いています。又、全国的に見れば、前述のように大都市圏への人口集中、地方の各地域においてはその地域の主要都市へ、各都市においてはその年の人気エリアに人が集まる傾向が顕著になっています。そうしたことを踏まえれば、青森市においても上昇しているエリアは僅かな上昇が続き、その周辺エリアと市内中心部では横ばい、又は僅かな上昇を見せる地点も出るのではないかと思いますが、それ以外のエリアでは、まだ下落が続くのではないかと思います。エリアによる価格差は拡大傾向にあり、今後数年は同様なのではないかと思います。

最後に…

住宅用地を購入する人にとって、その選択の基準は通勤や通学、買い物の便が主なものだと思いますが、土地を購入するということは資産の購入でもあります。資産価値は当然に変化します。1000万円のものが1200万円になるような、表面的な数字でもその変化を認識することはできますが、エリア間での相対的な価値の変化もあります。青森市内でいえば、新町と石江区画整理地を考えれば30年前と今とでは、“価値の違いが違って”います。そうしたことを事前に考えて意思決定していただければ、本当の最終満足の得られる土地購入になると思います。

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複利で考える

8月になりました。この季節、離れて暮らす家族が集まるご家庭で、日頃じっくり話すことがないお金や相続について話し合う―という方もいらっしゃると思います。私たちFPはお金の専門家という位置づけがなされていますが、私が個人的に重要と考えているのは細かい金融商品知識以前に複利の効用を知るということです。

複利とは…

今、手元に100万円あるとします。年間5%の利潤を得られれば、1年後には105万円になります。元手の100万円をそのままに、単純に年間5%の利潤を20年間貯蓄すれば、100万円×5%×20年=100万円元手の100万円と合わせれば、100万円+100万円=200万円になります。これは単利の考え方です。一方、100万円の元手で20年間複利運用したらどうなるでしょう。1年後は、単利も複利も105万円に増えている状態で同じですが、2年目に突入するとき、複利では1年間で得た利潤も合計された105万円を新たな元手と考えます。よって、20年後には、100万円×1.0520≒約265万円単利で計算した場合と比べると複利の方が約65万円多く増えることになります。

複利の効用―ムリがない

例えば手元にある100万円を20年後には300万円にしたいと考えたとします。20年間で200万円増やそう、3倍にしようということです。単利の考え方ですと、200万円÷20年=10万円1年間に10万円づつ増やしていかなければいけません。10万円÷100万円=10%初年度から10%の利潤を得なければいけない計算になります。複利だとどうなるでしょう。20年間で3倍にするための金利を計算すると、約5.66%。単利の10%と比べると相当に小さい、したがって、複利で考えた方が最初からムリなく増やしていきやすいということがわかります。

複利の効用の応用

この複利の考え方は様々な場面で利用できますし、実際にされています。積立型の投資信託や、純金積立も長期にわたって利潤の再投資を行うものであり、価格変動するものではありますが、重要な要素として複利の考え方を導入しているものです。スタートしてから間もない期間は、単利も複利も大きな差はありませんが、長期化すればするほど、その差は大きなものとなります。元手100万円、5%の利潤で20年後には単利と複利で約65万円の差が出る旨を記しましたが、これが30年では182万円、40年では、なんと約404万円の差に広がります。“積み重ねが大事”とは、お金のことに限らず、一般的によく言われることですが、仕事や勉強、スポーツなどにおいても努力し続ける人とそうでない人は複利で差がつく―そんなイメージで日々過ごすと、一日一日をもっと大切にできるのではないでしょうか。

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民法改正と賃貸住宅の敷金・原状回復

平成29年5月26日、民法(債権法)改正法案が成立しました。民法が制定されてから実に120年ぶりの大改正となり、社会・経済の変化への対応、わかりやすさを念頭においた改正になっているようです。賃貸借契約について見てみると、敷金は「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう」と定義されました。敷金の返還義務についても明文化され、賃貸借終了時の原状回復義務については、「賃借人は、賃貸物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年劣化は除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を現状に回復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰すことができない事由によるものであるときは、この限りではない」とし、経年劣化、つまり月日が経って自然に損耗したものは現状回復の義務外ということになりました。


国土交通省が取りまとめた『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』では、「原状回復とは、居住人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されており、今回の改正もこのガイドラインの内容に沿っていると言えるでしょう。では、どのような場合に原状復帰のために敷金等で負担をしなければならないかというと、建物や設備の自然的な劣化や損耗(経年変化)や、賃借人が通常の使用をしていても発生する損耗を除く、“明らかに通常の使用の結果によるものといえないもの”が借り手の負担となります。明らかに通常の使用の結果によるものと言えない事例、原状回復のために入居者の負担になる事例を見てみましょう。


【床】
・カーペットに飲み物をこぼしたことによるシミ・カビ
・冷蔵庫したのサビ跡、引越作業で生じたひっかきキズ
・賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによる畳やフローリングの色落ちなど
【壁・天井・クロス】
・台所の油汚れ
・結露を放置したことより拡大したカビ・シミ
・タバコ等のヤニ・臭い
・重量物をかけるために壁などにあけた釘穴・ネジ穴で下地ボードの張替が必要なものクーラー(賃貸人所有)から水漏れして放置したために腐食した壁
・落書き等の故意による毀損など
【襖、柱など建具】
・飼育ペットによる柱等のキズ・臭いなど
【設備、その他】
・ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ
・風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ等


原状回復のために敷金から支払われている例を見ていると、明らかに借り手の使い方に問題がある場合に負担しなくてはいけなくなるのがよくわかります。シミやカビは、汚れた部分を放置しておいたことによるものですし、油汚れなども普段からしっかりとキレイにしておく習慣がついていれば…という類のものでしょう。掃除が嫌い!ですとか、なかなか仕事が忙しくて掃除ができない、など理由もいろいろあるとは思いますが、普段からの何気ない行動と対応が後々のトラブルを回避することになりますので、生活する上では「こまめに」がキーワードになりそうです。換気扇、グリル、ガス台の油汚れはこまめに落とす、冬場に結露が発生しやすいのであればこまめに窓を拭くようにする、お風呂の水垢は放置しておくとなかなか取りづらくなるのでこまめに洗剤を使い掃除するなど、掃除も楽しみながらできるような工夫をしてみたいものです。家の中がキレイになっていると心もスッキリします。賃貸住宅を退去する際には、借り手も貸し手もトラブルなく、気持ちよく契約を終了させたいですよね。賃貸住宅はあくまでも貸し手である大家さんからお借りしているもの。今回の民法改正で明文化されたことも踏まえた上で、これから新しく賃貸住宅を探し入居される際には、後々のことも考えた新生活を送れるようにして欲しいと思います。

おしえてムーラン

地域のあり方と「サ高住」について

先日、弊社社長と「境界」の話題になりました。昨今、高齢や認知症で施設入居し身寄りのないままお亡くなりになる方が入居前に暮らしていた住居について、たとえば、境界がはっきりしないまま国庫に帰属し、公売にかかるケースっていうのも今後増えていくよね…そんな話をしているうちに、自分が住んでいる家の境界がどうなっているのか気になり、帰宅後父に確認しました。我が家は建て替えしてから数年経過しますが、建て替えの際に土地家屋調査士さんの立ち会いのもと、両隣且つ後方の世帯主の皆さんに同席していただき、境界の確認を行い登記したとのことでホッとしました。不動産の売買時には、どこからどこまでの土地が対象の物件なのかをハッキリさせておいたほうが、後々のトラブルにもなりにくいため、境界明示は大切です。また、境界確認の際にご近所の方々が同席してくださったのは、普段からのお付き合いがある程度なされていたからだろうと私は思います。このご近所付き合いの大切さは、事あるごとに感じています。特に身に染みたのは、輪番制で巡ってくる町内会の当番の仕事でした。ゴミ集積所の掃除や回収日前の準備の仕方、町内会費の徴収など、すべて母任せにしていたため、母亡き後、私に代替わりしたところで何をしたらよいかわからず困っていたときに助けてくれたのはご近所の皆さんでした。国では“地域包括ケアシステム(※)”を推進していますが、先ずは、ご近所同士言葉掛けをしたり、互いに気にかけあう土壌作りが大事なのではないでしょうか。


一人暮らしをされている高齢の方で、認知機能が衰えたために、光熱費などの小口の支払いができなくなり、ライフラインが止められる状況に陥ったという事例を何件か聞きました。もし、自分が同じような状況になったらどうするのか。そもそも自分は最期をどこで迎え、終末期をどうしたいのか…。生まれたからにはいずれ必ず死は訪れるわけで、自分の判断能力がしっかりしているうちに文字の形で“想い”を残しておくことは、自分の死後を任せる相手への礼儀だよなって、最近殊更感じます。


さて、“終の住まい”の選択肢のひとつである「サービス付き高齢者向け住宅(以下サ高住)」について、最後にお話させていただきますね。住宅型有料老人ホームと同じように考えていらっしゃる方が多いようですが、根本的に違うものなのです。サ高住は「施設」ではありません。「住宅」なのです。そのため、もしサ高住に住んでいて介護が必要な状態になった場合は、介護サービスは別途サービス料金を支払って受けることになります。以下、サ高住の特徴をご参考までに挙げてみました。①主に賃貸借契約②安否確認・生活相談サービスは必須③日中(概ね9時から17時)は職員常駐④介護保険サービスについては併設された事業所や外部事業所の居宅サービス(訪問看護・デイサービス等)が利用可能⑤入居一時金の徴収不可


※地域包括ケアシステム
2025年(平成37年)を目途に、高齢になり、要介護状態になっても、住み慣れた地域における「住まい」「医療」「介護」「予防」「生活支援」の5つのサービスを一体的に受けられるケア体制のこと

おしえてムーラン

2つの路線価

“路線価”というと、ほとんどの方は「相続税路線価」を思い浮かべると思います。私たち不動産関係者でも、単に“路線価”と言うときは相続税路線価の意味で使っていますが、実は“路線価”と名のつくものがもうひとつ存在します。それが「固定資産税路線価」です。

2つの路線価の共通点

①この2つの路線価は、どちらも公的に発表される価格であり、価格時点(いつの価格を表しているのか)が、毎年1月1日であるという共通点があります。②どちらも1㎡あたりの価格を表しています。③土地取引の価格相場を推定するときに、公示価格との目安となる割合を利用して導き出すことができます。

2つの路線価の相違点

①当たり前ですが、相続税路線価は相続・贈与の際の課税計算のもととなる価格、固定資産税路線価は固定資産税の課税計算のもととなる価格です。②相続税路線価は相続・贈与に関わる旨前述しましたが、ということは、人間の一生のうちで実際に課税計算の対象となる機会はそんなに多くはありません。それに対し、固定資産税は、不動産などの固定資産を所有している人は毎年課税対象となります。この違いを考えれば、2つの路線価を比較したときにその課税機会の多さから、課税される側にとっては、固定資産税に対してよりシビアになるのが一般的な感覚ではないかと思います。それを反映してか、相続税路線価が千円単位で表示されているのに対し、固定資産税路線価は百円単位で表示されています。固定資産税の評価は相続税評価よりデリケートであるということになります。最近は、土地価格の下落率が縮小しているため、相続税路線価は横ばいでも固定資産税路線価は若干下落というところも多く見られるようになりました。③土地取引の価格相場を推定する際は、○ア 相続税路線価は公示価格の8割程度であるため、0.8で割り戻せば、公示価格水準=土地取引の際の概ねの相場価格が計算できます。○イ 一方、固定資産税路線価は、公示価格の7割程度であるため、0.7で割り戻せば、公示価格水準の計算ができます。④又、公示価格水準を計算するに当たり、相続税路線価は、いわゆる街中には付されていますが、郊外では「倍率地域」という固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて相続税評価を算出しなければいけない地域があります。固定資産税にはそうした概念はないため、どんな場所にあっても、固定資産税路線価は計算の際に利用できます。

実際に見てみよう!

この固定資産税路線価は、インターネットの「全国地価マップ」というサイトで、誰でも無料で見ることができます。又、このサイトは固定資産税路線価を見ている最中にクリックひとつで相続税路線価も見ることができます。持家に住んでいる方など、固定資産を所有している人には4月に市から納税通知書が届いたと思いますが、実際にご自身で固定資産税路線価を見て、納税通知書に記載の評価額と見比べてみると、より理解が深まると思います。

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