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おしえてムーラン

老後資金2000万円不足問題について

先月は、老後資金として2,000万円が不足する―ことが話題となりました。従来から年金制度は改革しないと持続できないと言われており、国民の多くは理解を示していたはずなのに、ちょっと今さら感のあるドタバタだったように感じます。

報告書の内容は…

「2,000万円不足」の部分だけがクローズアップされてしまいましたが、金融庁金融審議会でまとめた報告書の要旨を簡潔にまとめると、①平均的な世帯で1ヵ月あたり5万円不足する。65才から30年間生きているとして、5万円×12ヵ月×30年間で、ザックリと2000万円位不足する。②65歳時の平均的な貯蓄額は約2,200万円。但し、住宅ローン残債がある、というものです。つまり、上記12を考え合わせると、平均的な世帯の実際の不足額は、65歳時の住宅ローン残債を若干下回る程度と読み取れます。

不足額の把握は正しいのか?

あくまでも報告書で示されているのは、平均的な世帯であり、当然に個々の世帯により事情は異なります。仮に、前述の話が概ねあてはまるような世帯であっても、65歳時の住宅ローン残債の多寡や、その対象となる住宅の今後のリフォームや建替の必要の有無が、家計に大きな影響を与えることは明らかです。自身のライフプランを具体的に検証してみることが肝心です。

制度上の問題

いずれにしても、現行の年金制度は世代間扶養の考え方に基づいていますが、年代別の人口構成が大きく変わった今、根本的な見直しを図る必要に迫られています。しかし段階的に、また複合的に家計を支える要素などを考慮して決定しないと世の中が混乱します。一粒で効く特効薬的な政策は作りようがないと思います。

現行制度を複眼的に見る

人口構成の変化とその今後の予測からすれば、若い世代ほど“年金はアテにならない”と考えるのは尤もだと思います。ただし、現在の受給水準が将来から見て高いものだとすれば、その受給高齢者を扶養している子世代は、間接的にその思惑を受けていることになります。負担と給付は、複眼的に見ることも大切かと思います。

家計を潤すには…

仮に年金だけでは老後に金が不足するとして、それでも家計を潤そうと考えれば、①労働により収入を増やす②投資収益を得るの2つが考えられます。①の労働収入は、現在の受給者やこれから間もなく受給対象となる人にとって最も現実的な方法です。②の投資によって収益を得る方法は、対称的に若い世代におススメな方法です。長期の方が複利の効用で運用成果が出やすいからです。高齢になって不慣れな投資により損失を被っては元も子もありませんが、退職金や年金の一部を運用するのも一つの方法です。(具体的な方法案は、3月号に記しましたので弊社HPよりご覧ください)ただ、人手不足と言われる世の中で、まだ働ける高齢者の活用は、年金制度の側面から見ても重要な課題だと思います。

最後に…

そもそも、自助によって皆が老後資金を賄うのが筋ではありますが、現実的には理想論です。だからこそ年金制度が存在します。とはいえ、本来の筋を忘れてもいけないと思います。“自分の老後資金は自分でなんとかする。でも、事情によりそれが困難な人もいるのだから、そういう人の一助になってやろうじゃないか”という心意気を持つ人が広く世の中に増え、そうした考えが国民の総意として根付くことが、実は一番大切だと思います。

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投資がはじめての人こそ挑戦したい!「ポイント運用」

「投資とか資産運用って、ハードルが高いし始めるきっかけがないし…」そう思っていて、一歩を踏み出せていない方は多いかもしれません。まだ投資などしたことがない!という投資がはじめての人にこそ体験してもらいたいサービス、それが『ポイント運用』です。身近にあふれているポイントですが、最近、続々と運用できるポイントが増えてきています。ポイント投資として運用できるポイントの主なものとしては、・dポイント(NTTドコモ)・永久不滅ポイント(クレディセゾン)・楽天ポイント(楽天グループ)・Tポイント運用(ネオモバイル証券)・Pontaポイント運用(株式会社ロイヤリティマーケティング)・au WALLET ポイント運用(KDDI)・トラノコ(おつり投資)などがあります。


家計管理をしやすくするために、日々の食料品など買い物をする時はクレジットカードを必ず使っている方も多いと思います。例えば、楽天カードを普段使っているという場合、お買い物をする際に「楽天スーパーポイント」が100円につき1ポイントついてくるので、支払いをまとめて一本化していればポイントが多く貯まりますよね。そのポイントを使ってまた買い物をすることができますが、ぜひその貴重なポイントを運用にあててみましょう。ポイント投資は大きく二つに分けられます。①証券口座が不要でポイント運用②証券口座を開いてポイントで実際に投資信託を買う(ポイント投資)はじめやすいのは①証券口座が不要でポイント運用をするタイプ。今持っている通常のポイントを運用ポイントに移行・追加することで、投資信託に連動して運用ポイントが日々変動していきます。増えたポイントは引き出して、通常のポイントとして利用することができます。楽天スーパーポイントで運用する場合を見てみましょう。楽天Point Clubのサイトからすぐに登録して、100ポイントから運用をスタートすることができます。追加できるポイントは100ポイントずつとなり、14時までのポイント受付で翌営業日の基準価額で運用が開始されますので、証券会社の口座を申し込んで開設されるのを待つといった時間がなく、思い立ったその日から数日で運用が始められるのが良いところです!運用は「アクティブコース」、「バランスコース」の2種類から選びます。ホームページやアプリからすぐに確認できますが、アクティブコースの値動きを見てみると、上がったり下がったりの幅が大きいことがわかります。このアクティブコースは全世界の株式と債券に70:30の配分で分散投資する「楽天・インデックス・バランス・ファンド(株式重視型)」の値動きに反映して運用ポイント数が増減します。対して、バランスコースは株式と債券の割合が30:70の配分で分散投資する、「楽天・インデックス・バランス・ファンド(債券重視型)」の値動きに反映されます。2つのコースのうちどちらを選べば良いか?については、まずは簡単に「減る可能性もあるけれども少しでも多くポイントを増やしたい!」か、「できるだけ減らさないようにしたい」かという基準で、アクティブ、バランスのいずれかを選んでみるのが良いでしょう。


実際にポイント運用を始めてみると、値動きを日々見てみるのが楽しくなります。少し増えたポイントを見てニンマリするのも良いでしょう!ポイント運用の良いところは、まとまったお金がなくても、100ポイントなど、現金の代わりになる少額のポイントを利用して気軽に投資体験、運用体験ができるところです。株価が下落すれば、それに伴ってポイントが減ることももちろんあります。ここで、ポイントが増えた時の自分自身の気持ちの変化、減ってしまった時の気持ちの変化がどうなるのかをしっかり感じてみてください。このメンタルの経験を積んでおくことによって、次なるステップ、『ポイントで実際の投資信託を購入する』、『ポイントで投資信託を積み立てる』、つまりはポイント投資まで進むことができると思います。キャッシュレス化が進み、買い物でクレジットカードなどを利用する機会が増えると思います。楽しみながら買い物をして貯まったポイントを、ポイント運用にあててみるのはいかがでしょうか。

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これからは「お金」にも働いてもらおう

改元の日。朝刊を読んでいたら見出しに大きく「令和幕開け」とあった。以前、昭和から「平成」という新元号になった時も特に日常に変化はなかったけど、今回もやはり今のところ平穏な時間が過ぎている。新聞をめくっていくと経済面に「地銀10年後6割赤字」という日銀試算の記事が載っていた。人口減少や超低金利時代の昨今、地銀は住宅ローン等の融資残高の縮小や、企業への貸し出しにも低金利の煽りを受けており、景気が悪化した場合は損失が膨らむのではないか、という内容だった。すでに地銀の統合や合併論は「平成」時代から出ている話。それでも敢えて日銀が発表したのは、それだけ地銀に対して(いや、私たち消費者たちに向けても)改めて注意喚起を促したのかなと。思えば、私が生まれた年(1974年)の普通預金金利は3%だったそう。もちろん、昔と現在とでは経済状況も、お金の価値も異なるので一概に比較できないけれど、今の3000倍ってとこ…。当時は高度経済成長期真っ只中。企業への設備投資も活発化し、金融機関では融資が増えたために金利も上昇。つられて預金金利も上昇。ちなみに昭和から平成にかけてのバブル期(1980年代後半~1990年代前半)では、普通預金の金利は平均で2%、定期預金で6%、郵便局の定期貯金になると8%…今じゃ夢みたいな金利。…って、昔を懐かしんでいても仕方ない。これから先、年金の受給額が増えることもないだろうし、インフレだって進むはずで。令和を生きる私たちは自分自身でお金を増やさないといけない。


預貯金は、インフレ率が金利を上回ると目減りする。安倍政権下ではインフレ目標を掲げているわけだし、老齢年金についてもマクロ経済スライドという仕組みが発動しているため、年金の受給額が物価や賃金の上昇ほどには増えないようにしている。今後退職をし、収入が減る現役世代は、今の年金受給世代のように「貯蓄と年金」だけで贅沢しなければ暮らせるわけではないのは目に見えている。では、どうやってお金を増やしたらいいのかというと…ざっくり言えば「①利息」「②配当金」「③値上がり益」が私には一番身近かなと感じている。「レバレッジ」で増やす、というのもあるそうだけど、度胸のない私にはハイレベル(笑)。そして、この投資は始めるなら早いほうがいい。なぜなら、「時間」を味方につけることができるから。時間が長いほど、仮に損失が出ても挽回できるって思えるし、歴史が証明している。以下に上記①~③の性格を持つ金融商品を挙げたのでご参考まで。①利息:個人向け国債、公社債、外貨預金など(個人向け国債は0.05%の最低保証の利率があり、1年後には換金も可。ちなみに個人向け国債は1万円から購入可能。購入先は銀行、証券会社など)②配当金:株式、投資信託、ETFなど(株式投資は100株単位・スマホからだと1000円程度から証券会社にて購入可。“株主優待”がある企業も。ただし株価は毎日変動しているため、値下がりすれば損失が出る。投資信託は銀行、証券会社、投信運用会社から購入。元本保証ではない。こちらも投資対象が国内外の株式や債券等になるため価格は変動。)③値上がり益:株式、投資信託、金など(金は貴金属店等で購入。購入時より売却時の価格が上がれば利益を得ることができる。)投資する際は、自分のリスク許容を踏まえ、真逆の値動きをする商品など、様々な性格をもつ金融商品を複数組み合わせて分散しながら行うと、一つの商品で損失が出ても、他の商品で損失分をカバーできたりしがち。それと、ご自身である程度投資商品について調べてから購入に臨んでいただければと。自身で納得して選択した商品なら、利益も損失もすべて「自分のもの」。投資は自己責任、です。


今ある環境のなかで、令和を迎えたこれからも、健康で無事に過ごすために、今から自分のお金にも「働いて」もらいませんか?

おしえてムーラン

土地・建物価格の今後の予測

「令和」がスタートしました。平成ではバブルがはじけ、日本の経済は混迷の中で模索を続けていたように思います。経済大国といまだに言われる日本ではありますが、その世界経済に占める位置は中国などの台頭もあり相対的に低位となってきています。

今年の公示価格と今後の動向予測

3月下旬に公示価格が発表されました。全国的にみると、全用途平均は4年連続で上昇しています。青森市においても、76地点中4地点が上昇、下落は33地点ですので半数以上は横ばいでした。市全体でみると、底打ち感が出てきたと言えると思います。但し、上昇した浜田2丁目が3.2%と、その上昇幅を広げたのに対し、下落地点はほぼ郊外の地域となっています。いわゆる街中は、上昇又は横ばいで今後も推移すると思いますが、郊外においては下落幅は縮小したものの、今後の人口減少予測を鑑みれば、下げ止まるのがいつなのかは見えづらい状況です。毎年、公示価格発表後にこのコーナーで地価の傾向について記してきましたが、上昇地域と下落地域の格差は広がりを見せるばかりであり、今後もその趨勢は変わらないのではないかと思います。

建物の価格は…

新築住宅の単位面積当り価格(坪単価)は上昇し続けています。様々な要因があると思いますが、建築業界の人手不足による人件費のアップが価格に転嫁されていることは大きな要素だと思います。また、円安は資材の輸入コストの増加につながります。最近の株式市場を見ていると円安でなければ株価が下がるという見方が強く、円安期待圧力が強いように感じますが、建築資材を含め原材料を輸入に頼る日本の生活者にとっては、消費の様々な局面でのコストアップにつながってしまうことになります。さらに、建物価格については、近年暖房設備や窓、外壁といった躯体に関連するところまで部材の性能が向上しているものの、それが1坪当たりの価格上昇の一因にもなっています。平成12年(2000年)4月に「住宅の品質の確保に関する法律(以下、品確法)」が施行されたことにより、建築業者がお客様に引渡した後10年以上、主要構造部等について瑕疵担保責任を負うことを義務付けられたことも、粗悪な住宅を排除する目的を達成するとともに、住宅価格を引き上げる要因にもなったと思います。今後、上昇幅は縮小するかもしれませんが、上昇傾向は続くのではないかと思います。

中古住宅の価格についての理解が重要

新築住宅の価格の上昇は、中古住宅の建物部分の価格を引き上げる要因になります。中古住宅の建物の価格を判定する上での主たる3要素は、①再調達価格 ②経済的耐用年数 ③経済的残存耐用年数の3つです。再調達価格とは「今、この建物を建てたらいくらかかるか」という価格です。建てた時の価格ではありません。もちろん「昔は一般木造住宅の坪単価が35万円位だったけど、今は60万円くらい」などという一般論のみをそのまま反映させるわけではありません。前述のように部材の性能の向上による価格上昇分もありますから、そうした部分は除いて考える必要があります。とはいえ、「昔、坪単価35万円で建てた」家が再調達価格で35万円相当を上回ることはご理解いただけると思います。また、経済的耐用年数も伸びてきています。経済的耐用年数は、建物の物理的耐用年数と必ずしも一致するものではありませんが、昔の建物に比べ物的な耐用年数が伸びてきていることは経済的耐用年数に当然に影響を及ぼします。再調達価格が上昇し、経済的耐用年数が伸びるということは、中古住宅の建物部分の価格を押し上げるということになります。

最後に

人口減少に伴い、土地と建物の経済的価値は、相対的に建物の価値を上昇させています。住宅購入の際には、土地の利便性と建物の規模や品質を総合的に考え合わせて意思決定することになりますが、資産を購入するという側面が必ずありますので、そうしたことも頭の片隅に置きながら、満足できる住まいの購入をしていただければと思います。

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『ねんきん定期便』を確認していますか?

「老後、自分の年金はどれくらいもらえるの…?」と、会社員、自営業者ともに漠然とした不安は少なからずあると思います。老後の生活設計を考える上でしっかりとチェックしておいて欲しいのが、国民年金、厚生年金保険に加入している人へ誕生月に毎年1回、日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」です。ねんきん定期便は50歳未満の方であれば、①年金加入期間②年金見込み額③保険料の納付額④直近1年分の保険料納付(月別状況)などを確認できます。誕生月の第三週目、20日前後にハガキで届きます。年金の受け取りに必要な加入期間を確保するための節目年齢である35歳、45歳、年金の請求を控えた59歳の人には封書で送られてきます。「自分が受け取れる年金が知りたいけれど、すぐには見方がわからない!」のであれば、スマートフォンアプリ『LINEねんきん定期便試算』を利用してみると良いでしょう。ねんきん定期便を用意し、アプリ内でカメラを起動するをタップ、ねんきん定期便の写メールを送り、簡単な質問に答えるだけで老齢年金の確認ができます。50歳以上の方であれば、老齢年金の年金見込額が記載されているので、今のままで働いた場合の受け取れる年金額がわかります。あくまでも給与がこのままの条件で働き続けた場合の年金額になりますので、54歳で一度退職となり、給与体系が変わるような職業の方は少し注意して見ておく必要があります。


また、年金の加入期間などをより詳しくインターネットで確認できるのが「ねんきんネット」です。利用するには登録が必要になりますが、ユーザーID発行数はサービス開始から約4年で350万件になり、現在では500万件超えと利用者数は増えてきています。ねんきんネットを使うメリットは、24時間いつでも最新の年金記録を確認できること(カラーでわかりやすく表示)、今後の働き方などの条件を細かく入力することで将来の年金見込み額を計算してくれること(職業・収入など質問に答えていく形式での試算も可能)、支給年齢を繰り上げたり繰り下げたりした時のシミュレーションができたり、受取額の比較などもできます。年金事務所に提出する、年金請求書などの“各種届書”を作成することもできます。ねんきん定期便から他にわかることとしては、万が一のことがあった場合の遺族年金がどうなるか、ということもわかります。自身の遺族年金がどうなるかがわかり、足りない保障があるとわかれば民間の生命保険などで補うことを考えなくてはいけません。こちらに関しては、ねんきん定期便の見方や公的年金制度を良く理解できているファイナンシャル・プランナー等に確認することをおすすめします。以上のように、ねんきん定期便をしっかり見ることで、「将来の公的年金と公的保障を見える化」することができます。しっかりと年金の確認をして理解を深めながら、老後足りないであろうお金については、会社員は会社員の、自営業は自営業としての対策を“時間を味方につけて”今から実行するのがとても重要になりますね!

おしえてムーラン

株式投資の実践的基礎知識

「貯蓄から投資へ」と言われて久しいですが、投資と聞いてまず思い浮かぶのは株式投資ではないでしょうか。昨年末から今年の年初にかけて日本の株式市場は乱高下しました。アメリカと中国の、いわゆる貿易摩擦は世界の株式市場の先行き不透明感を今後も感じさせるものであり、投資家や市場関係者の多くが、いまだに不安を感じていると思われます。世界の株式市場の中でも、特に日本はブレ幅が大きくなっています。日本の市場参加者の概ね6割強は外国人、そのうち約7割がヨーロッパ人だと言われていますが、これだけ乱高下した中で“下”で売ったのは日本の個人投資家が多いと聞きます。株式投資の教科書のような本を読むと、「長期投資」の有効性を説いたものが多いのですが、これから株式投資を始めようと思っている方に、簡単ではありますが実践的な話をしたいと思います

少額から始める

当たり前ですが、最初から大きな額を投入するのは危険です。あくまでも、余裕資金の範囲内で始めましょう。

計画を立てる

これは、株式投資を始める時の基礎となるものです。例えば100万円を10年間で200万円にしようと考えた時、みなさんなら1年目でいくらまで殖やせばいいと思うでしょうか。単純に計算すれば「1年あたり10万円儲ければいいのでは…」となります。当然、1年目から10%の利益を上げるということになります。また、純利で10%の利益を確保しようと思えば、税や売買手数料を考慮すると14万円弱―率にして14%弱を表面差益で確保する必要があることになります。初年度から14%弱という数字は熟練した人にとっては無理な数字ではないと思いますが、初心者にはやや重荷になると感じます。そこで考えたいのは複利の逆算です。10年間で2倍にするためには、年間約7.2%の複利で継続すれば達成できます。純利で7.2%を確保するための目安は、表面利益で10%弱となります。更に月ごとに複利の逆算をすると、月当り0.8%の表面利益を確保できれば年間10%の表面利益=7.2%程度の純利が確保できます。

ブレを利用する

様々な銘柄を物色しなくても、応援したい会社の値動きを見ていると、一日の中で、一週間の中で、結構なブレが生じているのがわかってきます。そのブレを利用することで差益を積み上げるという方法もあります。

少銘柄+複数単元

たとえば100株単位で売買されているものであれば、時間をずらして100株(最低単元)ずつ購入し、300株程度にします。これをまた時間をずらして100株ずつ売ったり買ったりする―この方法が最も実践的と思われます。大儲けもしない代わりに、大損もしないスタイルであり、応援したい会社を応援し続けながら、自分の利益も積み上げられ、言ってみれば「結果的な長期投資」となるような方法です。

3分の1くらいは口座に残す

応援したい会社の株式を購入して、ずっと保有するというスタイルが投資の教科書的なものであり、投資の本懐というべきものなのでしょうが、追い足・逃げ足の速い外国人機関投資家に対抗しながら利益を上げ続けるのは意外と難しいものです。証券会社の口座に入金した額のうち、3分の2を実際に動かし、3分の1は不測の事態に備えて置いておく―この方法はとても有効だと思います。この3分の1は、今のように乱高下する可能性が高い相場で、急落したときに下値で拾う原資とすべきものになります。口座入金額のすべてを最初から投入してしまうと、急落を逆手にとってチャンスに変えることができなくなります。換言すれば、乱高下は利益拡大のチャンスでもありますが、まずは少額から初めて、市場を見続けてみてください。

おしえてムーラン

不動産と消費税プラスα

消費税10%への増税を前に、「今のうちに欲しいものを買っておいたほうがいいのかな」と思っていらっしゃる方、私だけではないかと思います。日用品や食品は、どうしても必要なものなので、税率が上がっても今まで通り購入するのかな、と思います。消費税の税率が3%→5%→8%と上がっても、日常生活で必要なものは購入してきましたしね。自分の身近なものに対する消費税については結構敏感に捉えているのに、おそらく人生の中でも大きな買い物―不動産の売買にかかる消費税についてはどうでしょうか。住宅の売買などで消費税が課税される対象には、そもそもどのようなものがあるのでしょうか。次のような金額が対価となる取引があげられます。・住宅の建物価格(土地は非課税)・不動産会社に支払う仲介手数料・住宅ローンの融資手数料・駐車場の賃料 など売主が課税事業である不動産業者から購入した場合は、課税されるということになります。ちなみに住宅の建物価格については、売主が個人や免税事業者である場合は消費税がかかりません。また、不動産価格は税込表示です。しかし、仲介手数料は税抜価格をもとに計算することになっています。なお、消費税の課税対象である住宅は、新築・中古であるかどうかは問いません。

2019年10月から10%にアップ

住宅を購入する際の消費税は、『引渡時の税率』が適用になります。現行の8%の税率で住宅を購入しようと思うのなら、2019年9月30日までに『引渡』を受けることが必要です。(契約締結が2019年9月30日以前であっても、10月1日以降に引渡を受けるのなら、消費税率は新税率の10%が適用になります。)ただし、注文住宅などは完成時期が多少ずれこむことがあるため、経過措置があります。(請負契約の締結を2019年3月31日までに行えば、引渡が10月以降になっても現行の8%が適用になります。)

プラスα:領収証の印紙税

最後に消費税ではないのですが、不動産売買で発行される領収証の印紙税についても触れておきたいと思います。不動産の売買では高額のお金が動くので、領収証などが発行されます。この領収証にもその金額に対応した額の印紙を貼付することになるのですが、注意点があります。領収証の課税・非課税は、売主が個人なのか、法人なのかで変わってきます。法人の場合は、印紙を貼付する必要がありますが、売主が個人の場合で事業性がない場合は、所有不動産の売却に対して発行された領収証には印紙税はかかりません(ただし、投資用物件の売却の際はかかることもあります)。消費税の増税は、住宅購入をお考えの方には非常に大きな判断材料です。ただ、一番大切なのは、購入される方・購入されるご家族の、将来のライフプランニングだと思います。あなたやあなたのご家族が住みたいのは新築住宅?中古住宅?それぞれの金額を想定した資金計画を立ててみませんか。

おしえてムーラン

民法改正(成年年齢の引き下げ)による影響は?

平成30年の第196回通常国会で「成年年齢の引き下げ」と「相続法改正」という、私たちの身近に関わる部分での改正が成立しました。今回の改正は、本則で民法そのものを改正し、附則で民法以外の関連法律を改正したものとなっています。相続法の改正も大切なのですが、今回は「成年年齢の引き下げ」についてフォーカスします。そもそも成年年齢の引き下げのきっかけとなったのは、2007年国民投票法の附則にて、公職選挙法上の選挙権の年齢要件を18歳以上の日本国民に与えたり、諸外国でも成年年齢を18歳にしている国が多いことも踏まえ、民法上の成年年齢に関して検討したことなどがあります。その後2015年には、改正公職選挙法も民法上の成年年齢に関して検討しています。そう思うと、今回の「成年年齢の引き下げ」については、以前から少しずつ検討されてきていたことなんだなって感じています。婚姻年齢も男女ともに18歳になり、親権者の同意も不要になります。また、養親年齢も20歳になりました。みなさんもご存知のように、法律の中には「成年」を要件とするものがたくさん存在します。ところで今回の改正ではすべての法令の「成年」を要件とする年齢が18歳に引き下げになったのかといえば、そうではありません。現行法の20歳を要件とするものもありますので以下に法務省のホームページで挙げているもののうち、一部特に気になったものを例示してみます。
〈18歳に引き下げた法令〉
・帰化の要件(国籍法)・社会福祉主事資格(社会福祉法)・10年用一般旅券の取得(旅券法)・人権擁護委員・民生委員資格(公職選挙法等の一部を改正する法律)など〈20歳を維持する法令〉・養子をとることができる者の年齢(民法)・喫煙年齢(未成年者喫煙禁止法)・飲酒年齢(未成年者飲酒禁止法)・勝馬投票券の購入年齢(競馬法)・勝者投票券の購入年齢(自転車競技法)・勝舟投票券の購入年齢(モーターボート競走法)など
…健康被害やギャンブル依存症への懸念から、飲酒や喫煙、競馬や競輪などは現行の「20歳」を維持した格好になるわけです。


成年年齢の引き下げで特に問題なのは、18・19歳の方が「取消権(未成年者取消権)」を失うことです。ちなみにこの未成年者の取消権は、現行法の20歳未満の者の法律行為のうち、法定代理人(親など)の同意がないものは原則取消しできるという権利です。成年年齢が引き下げになると、彼らはこの取消権を失うということになります。消費者契約法の改正も行われてはいます。ですが、それだけでは成年年齢の引き下げによる懸念材料を払拭することはできないため、その他の(たとえば「特定商取引法」など)法令の改正も政府では考えているようです。今回の民法改正で対象外になった社会保障制度や税制についても、成年年齢が引き下がったことで次の可能性があります。・国民年金(第1号)の強制加入年齢の引き下げ・iDeCoやNISAなどの税制優遇措置の年齢要件の引き下げこれからは今まで以上に若年層に対しての消費者教育が必要になるのではないでしょうか。

おしえてムーラン

不動産の売却にかかる感情と経済合理性

不動産を売却したときに税金がかかることは知られていますが、どんな税金がどのくらいかかるのか、そうした税金や宅建業者に支払う仲介手数料などの諸費用を差し引いた後、手元にどのくらい残るのか…となると、ある程度の知識がないと計算できません。不動産を売却すべきか否かを考えている方にとって、税金などの経済的な影響だけでなく、当然に個人の事情や感情も含めて、意思決定することになりますが、経済的なことが感情に影響することがあるのも事実です。

そもそも論

最近は“査定額を比較して高く売りましょう”というような、いわゆる一括査定サイトが多くなっています。数社に査定を依頼して比較した方が良いのは勿論ですが、高い査定額を出した業者が必ず高く売ってくれるわけではありません。買い取り査定と異なり、仲介の査定の場合は“これくらいで売れるだろう”という予測値です。高く売り出したために、競合物件を安く見せてしまい結果的に競合相手が売れるのを手助けしてしまうケースもあります。売主が高く売りたいのは当然ですが、競争力を見極めて適正な価格で売り出さないと、売れ残り物件になる危険もあります。

高齢者の売却事例

抽象論だとわかりづらいので、私が体験した事例を交えて綴りたいと思います。売主は80歳の女性。夫は既に亡くなり独り暮らし。市内に子(次女)夫婦が住んでいて、時々様子を見に来ている。体の衰えから、独りで生活するのも厳しいと感じるようになり、近日中に施設に入所することに決めた。しばらくは、住んでいる家も空き家になるが、できればこの家で最期を迎えたいと考えている。

分析① 感情、事情を重んじた場合

この女性は“最期をこの家で迎えたい”と考えています。実際にそのようになるのかはわかりませんが、こうした思いを持っていらっしゃる方の場合は、(敢えてドライに記しますが)この方が亡くなってから売却、つまり、相続人に所有権が移転してからの売却になる可能性が高いと思います。この女性の相続人は子になりますが、子の1人が単独相続しても、あるいは姉妹が共有として相続しても、この家を売却する時は自己居住していたものではないので、売却益が出れば譲渡税が発生します。また、売却した年の所得は売却益が加算されますので、翌年の健康保険料や住民税が大幅に上がることが考えられます。仮に、売却益が1,000万円だったとすれば、譲渡税(国税+地方税)を約200万円納付することになります。加えて、翌年の住民税(市・県合わせて)が、単独相続の場合は約100万円増えます。健康保険料については、上限額が(青森市の場合は93万円)が定められているので、増分を単純には計算しづらく、また、売主の年齢により内訳の一部である“介護分”は徴収額が変わってくるので一概には言えませんが、この事例の場合は「今まで支払っていた額と上限額の差額」が増分となります。

分析② 経済合理性のみを考える場合

この女性は近日中に施設に入所することを決めましたが、この家はこの女性が住んでいた家です。住まなくなってから3年を経過する年の年末までに売却すれば、いわゆる“3,000万円控除”が利用できます。これは、自分が住んでいた家を売って、売却益が3,000万円以内ならば、税を免れる制度です。この事例では、売却益が1,000万円としましたので、譲渡税は発生しません。また、この女性が売却の翌年に徴収される住民税や健康保険料についても、家を売却したことによる増分は発生しません。いかがでしたでしょうか。経済的な損得も感情に影響を及ぼすものの、経済合理性だけを考えても満足は得られません。ご自身の感情や事情と制度を照らし合わせ、最善の“落としどころを見つける”ことが大切です。

おしえてムーラン

人生100年時代を見据えた「年金の繰り下げ」

「きんは100歳、ぎんも100歳」。このフレーズを覚えている方もいらっしゃることでしょう。きんさん、ぎんさんが長生きをして長寿だと言われていたのが約18年前。今では100歳以上の方も増えてきており、青森県では平成29年度、585人(うち男性58人、女性527人)で、約9割が女性のようです。健康で楽しく長生きできるとしたら、とても素晴らしいことですよね!住宅ローンも40年返済など長期にわたるものも出てきており、人生100年時代が目の前に迫ってきているのをひしひしと感じます。


そこで私たちが考えなければならないのが、老後の生活とお金です。生活費は働いていた現役時代よりお金がかからなくなることもありますが、医療費、冠婚葬祭費など、かかってくるものも多くなります。また、老後の主な収入は年金という方が大部分だと思います。現在の公的年金制度は、しっかりと現役時代に年金保険料を納めているのが大原則となりますが、65歳から年金を受給できます。これからの年金のお得な受給方法として、「繰り下げ受給」があります。通常、65歳からの年金受給の開始時期を遅らせる(繰り下げる)ことで、1年あたり約8%の年金額を増やすことができます。年金受給を遅らせた場合の増加率は「繰り下げ月数×0.7%」で、例えば67歳と6ヶ月で受給開始したり、68歳4ヶ月で受給開始するなど、1ヶ月単位で繰り下げが可能です。5年繰り下げて上限である70歳まで繰り下げることで、年間の受給額を最大42%増やすことができます。老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに繰り下げることができ、それぞれの受給開始をずらすこともできます。「受給を遅くしたのにもかかわらず、早く亡くなったら…」との考えが出てくるかもしれません。確かに、繰り下げ受給をした場合、長く生きないと繰り下げている期間中に受け取れなかった年金額を取り返すことはできません。よく言われている損益分岐点は、約12年です。つまり計算上は、70歳から受給開始にした場合、81歳まで生きないと65歳からもらい続けた時の受給総額に追いつけないことになります。


これからのライフプランを考える上で、例えば夫婦で生活をしているのであれば、妻が年金の受給を繰り下げることもひとつの方法でしょう。あくまで目安にはなりますが、女性の平均寿命は87歳、男性の平均寿命は81歳で、上記、青森県の100歳以上の統計から、女性の方が長生きする傾向があることがわかります。女性は損益分岐点の12年が経過しやすいことと、夫に先立たれた際には、遺族厚生年金として夫が受け取れるはずだった金額の75%を受け取れることにはなりますが、夫婦二人で受給していた時より金額は減ってしまいますので、生きている間は夫に頼りつつ、繰り下げ受給をしておくことで年金を膨らませておけば、夫亡き後の生活にも安心感が出てきます。ただし、5年繰り下げて42%増えた年金が受給できる!と言っても、社会保険料・税金がかかってきますので、実際の手取りでの受給額は8~9割になると考えていた方が良いでしょう。家族、家計、貯蓄の状況やライフプランを見据えた上で、年金に関しても賢く受給できるようにしておきたいですね。

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介護保険を利用した住宅改修の留意事項

今年の8月より、現役並み所得の方の中には介護保険サービスの自己負担割合が3割負担になった方もいらっしゃることと思います。そもそも介護保険制度は、高齢社会で膨らむ医療費を抑えるため、できるだけ介護を在宅で行うことができるように始まった制度です。今回の制度改定では、在宅復帰や在宅療養といった「在宅支援」が軸となっています。とすれば、「在宅介護」を軸に考えた場合、やはり気になるのはご自宅の住宅改修ではないでしょうか。介護保険には訪問サービスや施設サービスだけでなく、要支援・要介護の方がご自宅で暮らせるように住宅改修にかかった費用を助成するサービスもあります(上限20万円)。とはいえ、費用の1割(所得によっては2割又は3割)を対象者の方が負担しなければならず、原則一人一回までの利用など、下記のような条件があります。①介護保険の要介護認定を受けている。②介護保険の被保険者である。(第1号被保険者(65歳以上)または第2号被保険者(40歳以上65歳未満で、末期がんなどの老化に起因する16種類の特定疾病に罹患されている方))③工事内容が決まっている。では、どのような工事内容が該当するのでしょうか?下記にざっくりまとめましたのでご覧ください(厚生労働省ホームページ参照)。①手すりの取付け②段差の解消③滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更④引き戸等への扉の取替え⑤洋式便器等への便器の取替え⑥①から⑤の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修詳しい内容につきましては今回は省きますが、イメージとしては転倒予防、寝たきり予防のための簡単な改修といったところでしょうか。また、住宅改修とともに大切なのが「福祉用具の活用」です。特に高齢者の住環境整備は、住宅改修と福祉用具の適切な導入が必要です。対象者の身体機能の低下を把握し、住環境への不適合に対して、住宅改修と福祉用具の活用を同時に行うことが不可欠となります。


ところで、賃貸の場合でもこの住宅改修のサービスは受けることが可能なのでしょうか?賃貸住宅での住宅改修は、すべて住宅所有者(大家さん)との交渉となります。大家さんからの了承が得られれば住宅改修は可能となり、介護保険の給付対象となります。また、大家さんの意向に関係なく給付対象にならない住宅改修もあるので注意が必要です。たとえば退去時の現状回復にかかる費用は、給付対象外です。大家さんとの話し合いで「退去時の現状回復」を条件に住宅改修をした場合、そこにかかる費用は自己負担になります。敷金だけで対応出来ない場合、不足分は自己負担となります。


介護保険制度を利用して住宅改修を行う場合、どこまでが介護保険の適用になるのか注意が必要です。通常、要介護者が必要な部分だけしか認められないですし、要介護者が現に居住する住宅を対象としており、住所地の住宅のみが対象となりますので、要介護者が子の住宅に一時的に身を寄せている場合などはご留意ください。詳しくは、市町村の介護保険担当課、ご担当のケアマネージャーさん、地域包括支援センターへご相談ください。

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建物の解体~売却との関連性

今年もお盆の季節がやってきました。普段は離れ離れに暮らしている家族が集まる時期でもあります。そうしたときに「母さんが住んでいたあの家どうする?」などという話の出る家庭もあるかと思います。空家の増加や、その放置のされ方が問題となっていることは周知の事実ですが、空家の管理・処分を考えるとき、その建物が古い場合は、建物の解体は避けて通れない話題となります。今回は、この解体について触れてみます。

解体の費用と見積

青森市内の解体費用の相場は、私の経験則で申し上げれば一般的な木造家屋の場合で建物1坪当たり3.5万円くらいです。ただ、これはあくまでも標準的なものであって、門や塀、樹木、駐車スペースとして利用していた部分のコンクリートの撤去などの費用がさらに発生することもあります。又、隣との距離がとても近くて足場がかけづらい、養生を通常よりしっかりとやらなければいけない、あるいは前面道路が狭く重機が入りづらい現場などは相応の費用もかかります。建物の中に残存物がある場合はその処分費用もあります。庭が立派な家や、建物が鉄骨や鉄筋コンクリート造の家は、建築や外構づくりにお金がかかったと思いますが、解体や撤去の際にも通常より費用が発生します。ところで、解体する前に費用がどれくらいかかるかを把握するために業者から見積をとるわけですが、実際に解体してから追加費用が発生するケースがあります。見積の時点では業者といえどもわからない、地中埋設物が出てきた場合がその典型例です。

地中の残骸物と売却

解体した建物がその土地での最初の建物だった場合はコンクリートの残骸などの地中埋設物が出てくる可能性は低いのですが、それ以前にも建物があった場合は、前回の解体の残存物が地中に埋もれたままのケースがあるのです。更地として取引され購入した方がそこに新築する際、基礎を作るために土を掘ったらこうした残骸が出てきた―というのは、そんなに珍しいことではありません。以前は住宅の品質の確保に関する法律もなかったですし、一般的に現在の住宅より基礎が小さかったため、多少の残骸があっても工事に支障がなかったのだと思いますが、今の法や建物の質からすると地中の残骸は新築するうえでとてもやっかいなものとなります。したがって、仮にこうした土地の売買契約を締結したとして、その契約条件として「売主は引渡後○月間、瑕疵担保責任を追う」とされていた場合で、その期間内に残骸等が出てきて買主から「除去してくれ」と言われれば売主はそれを除去しなければいけません。売主がいわゆる業者でない場合は瑕疵担保責任を付す義務はないので、“負わない”ということで売買契約を締結することも可能ですが、買主の目線で考えれば“だったら、もう少し安くしてくれ”と言われる可能性はあります。補足的な説明をすれば、瑕疵とはキズといった意味合いのもので、買主が購入後その目的を達成するための障害となるようなことをいいますが、“見えざる瑕疵”に限定されます。明らかに購入前に見たときにわかっていたもの、通常の注意力があればわかったであろうものや、契約前に売主から知らされていた事柄については、それを承知で購入したわけですから瑕疵には該当しません。

売主の責任

5月号で触れたインスペクションの趣旨と同様、時代は買主保護を強く要請しています。宅建業者や建築業者でなくても、不動産の売主には責任が求められていますので、売却を考える場合は以前より、覚えて、理解しておかなければことが多くなっています。

最後に

見積を確認した上で解体をしたのに、後から追加額が発生することは、依頼主からすれば“なんだかなあ”という思いになることは感情的に理解できますが、そうしたこともあるかもしれないと事前に心づもりをしておくことは必要です。又、見積を出す業者やその見積を解体業者に代わって依頼主に提出する宅建業者も、地中埋設物の件については、事前の説明をしっかりとしておくべきだと思います。解体費用については、ゴミの分別や事前のマニュフェスト作成が業者に義務付けられてから、又建築土木関連の人手不足と相まって相当に高額になった感がありますが、人間が共生しそれを持続していくための変化の一端として仕方ないのだろうと感じます。

付記―滅失登記は忘れずに

建物を解体しても、所定の手続きをしないと登記簿には記録が残ったままです。売却の際にこの登記が残ったままだと取引に支障がありますので、解体したら建物が無くなった登記上の手続き「滅失登記」を忘れずに行いましょう。滅失登記は土地家屋調査士に依頼して行うのが一般的ですが、その際の費用は概ね4~5万円程度です。

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